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「ハイラム・ホリデーの大冒険」ポール・ギャリコは児童書か?

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児童書らしい題名、とぼけたユーモアある表紙絵で、愉快な大冒険と思ったら大間違い。
今回の課題書
「ハイラム・ホリデーの大冒険上下」ポール・ギャリコ著/東江一紀訳/ブッキング
は、現代版ドンキホーテ冒険譚の枠に収まっていません。
1938年~1939年大戦が始まるきな臭い重苦しいヨーロッパを舞台に物語が広がっていきます。
ゆっくり反芻しながら読まないと含蓄ある名文に申し訳ない気持ちと、
どうやってこの窮地をハイラムが解決するのか心配で逸る気持ちの
せめぎあいの中で読みました。
ロンドンにいるあいだずっと、ハイラム・ホリデーは、伝統というものの強い感化力から逃げることができなかった。大昔のイギリスの民が、その前のローマ帝国の民が、さらにその前のケルトの民が、行く先々で語りかけてくるのだ。ところがパリでは、現代のことしか意識にのぼらない。それはたぶん、パリが今まで一度も古めかしくなったことがないからだろう。今までこの街に住んだ人々は、現代的な生きかたしかしてこなかった。
と街の印象が語られる。
オーストリアの墓所では、
歴史!その言葉が、ホリデーの胸に、誇らしく晴れやかな鐘の音のように鳴り響いた。歴史とは、美しい彫り模様入りの箱に収まった小さななきがらの集まり、この墓所を埋め尽くす偉大な王家のなごりのことなのだろうか?それとも、それは一瞬、ハイラム・ホリデー自身のことでもあるのか?そういうふらちな考えを浮かべた者には、たちまち天罰が下るのだろうか?
とホリデーは王女を想います。
この本は1939年に出版されたというのだから驚きです。日本では2007年出版です。
時代の緊張感が伝わり、その時代の人物が生きています。
ハラハラドキドキの大冒険話の中に、
歴史とは、誇りとは、自由とは、民族とは、身分とは、大戦は何だったのか、
立ち止まり考えなければならない種が撒かれていました。
子どもだけを読者にしておくのは勿体ない。
あなたも読んでみて!
by arigozira | 2014-09-09 18:27 | 読書・子どもの本 | Trackback | Comments(0)
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